大判例

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福岡高等裁判所 昭和26年(う)1209号 判決

背任罪が成立するには、任務違背の行為によつて本人に財産上の損害を加えた事実がなければならないことは所論のとおりである。しかし組合員に対する資金の貸付及び貯金の受入等の事業を営む組合において、組合長が任務に違反して不正の貸付をなし、その結果相当の時期に貸金を回収することができないため、他の原因と相俟つて組合資金の枯渇を来し、組合をして組合員に対する資金貸付及び貯金の払戻をなすことができない状態に至らしめたときは借主に債務を弁済する資力があるとしても、本人たる組合に対し財産上の損害を加えたものといわなければならない。原判決挙示の各証拠によれば、被告人は組合員に対する資金の貸付及び貯金の受入等を営む所論組合の組合長として、これに関する事務を担当していたもので資金の貸付を受け得るものは組合員に限られ且つその貸付限度は金二万円と定められているにかゝわらず、組合員たる田染定及び組合員でない広峰功の利益を図る目的で、右任務に背き昭和二十三年八月中三回にわたり田染に対しいづれも貸付限度を超え一時貸付として合計金十四万八千円を、同年十二月十日頃広峰に対し弁済期を翌年二月十日と定めて金四万円を各貸付けた結果、昭和二十五年七月頃に至つても右貸付を回収することができず、そのため他の同種不正貸付及び組合外の貨物自動車営業に対する組合資金の不正支出等の原因と相俟つて組合資金の枯渇を来し、組合員に対する資金の貸付及び貯金払戻をなすこと能はざる状態に立至らしめた事実が認められる。されば田染及び広峰に所論のような債務弁済の資力があつたとしても、被告人の右任務違背の貸付によつて本人たる組合に対し財産上の損害を加えたものといわねばならない。

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